29 / 125
〈第一章・25〉
「あーそうだ、胡蝶蘭さまの紙巻を作らないといけなかったような気がする」
「紙巻ね。何日分?」
「えーと、ううん、何日分だったっけ」
首を傾げ、おぼろな記憶をたどる。
牡丹はそんな僕を見下ろして、くすくすと笑い「変なの」と言った。
「重いっつの、なあ、ちょっとどいてくんない?」
「えー。手伝ったげないわよぉ」
彼女はむくれて、僕の手をつねった。
やっぱり、こうやってワガママを言ったり、ふくれっ面をしたりしている牡丹の方が、あんな〈人形〉みたいなものよりずっと可愛いのにな。
ちくりと、胸の深いところが痛くなる。
「モドリの玉だっけ……。薬、飲んだ?」
「うん。あれ、嫌い。気持ち悪いよぉ。ぐねぐねするー、ぐねぐねー」
「ぐねぐねー、ねえ」
僕も、目が覚めたときから、胸焼けがするというか――ぐねぐねする。
(――あ?)
「どしたの?」
「…………。なんでもない。ごめん、ちょっとだけベッド降りて、外で待っていてくれる? すぐに行くから」
「えー? やあだー。やだやだ、せっかく来たのにひどいー!」
イヤイヤをする牡丹に、優しくキスをして黙らせる。
「あ。……ん、ん」
牡丹を胡蝶蘭の寝室から追い出して、自分自身の、そして胡蝶蘭の蜜で塗れた身体を、急いで拭った。あとでこの汚れたシーツを洗濯して、吸殻で溢れた煙草盆もなんとかしなくては。
――しかし。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい
ともだちとシェアしよう!