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〈第一章・24〉

 ――あーき、ちーあーきー、ちあきってばぁ……。    手足が中々思うように動かない。  頭が痛い。ズキズキする。  この感覚は、たとえるなら――そうだ、大学入学祝いと称して、友達と初めてオールで飲んだ翌日の二日酔い、みたいな。    誰かが何かを言っているのはギリギリ分かるような気がするのだけれど。 「もうー。胡蝶蘭さまのお部屋の中なんて入って、バレたら怖いじゃないの」 (怖いんなら、最初から入らなければいいじゃないか)  僕の思いをよそに、足音はコツンコツンと近づいてくる。 「やぁん、つまんないー。起きる起きる起きるー」  ドスンと腹の上にまたがれ、 「起きてー、ねえー、千秋、千秋ってばぁー!」 ㅤ上半身を激しく揺さぶられている。 「う、う」 「千秋、ちあきぃ、ちあきーぃ!」  強烈な〈音〉が耳をつんざいた。 (うるさい……。ってか、苦しい、何しやがる……あ、この紅いドレス、覚えがある) 「ぼたん」 「おはよっ。ねぇー、もう昼刻よー? いつまで寝てんのよぅ」 「あー、生きてる、僕。死んだかと思った」 「ねぇねぇ起きたんなら遊ぼう? あっ、そうだ。お仕事があるんなら、特別に手伝ってあげてもいいわよー」  甲高い声がガンガンと脳漿(のうしょう)を直撃してきて、顔をしかめる。 「もうちょっと小さな声で喋って。すげぇ頭痛い」 「どうしたの? 具合が悪いなら医務室に行く?」 「う。行かない」  どうにもあの〈医師〉は苦手だ。悪い人ではなさそうなのだけれど。  考えるふりをして「仕事、仕事」と呟いた。  目の前がクラクラする。  頭のてっぺんから熱いシャワーを浴びられたら、もっとシャンと出来るだろうに。
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