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〈第一章・20〉
〈黒子が花姫に触れて良いのは、花姫が望んだときのみ。守れぬ輩は斬り捨てる〉
「千秋?」
細雪の冷徹な声と胡蝶蘭の苦しそうな声が重なり、ハッと我にかえった。
「すみません、つい」
つい、って何だ。
情けなくて自分が嫌になる。
しかし、僕の自己嫌悪とは裏腹に、胡蝶蘭は薔薇色の口唇を綻ばせた。
「妾の呑む紙巻をな、明日作っておけと命ずるつもりだったのだが……。悪くないな、心の奥底から求められるということは」
そう言って、白い薄手の寝間着の前を自分で外しかけたが、ふと思い直したように手を止め、従僕に命ずる。
「外せ」
「どこがどうなってんのか、よく分からないんだけど」
「分からぬのなら、止すか?」
「いやだ」
シフォンが幾重にも重なったワンピース状の寝間着をまさぐると、ほっそりとしているのに柔らかい肉体を感じる。この身体を今から直に触れられるというのに、たかが着る物一枚脱がせられないせいでやめるなんて、冗談じゃない。
胡蝶蘭づきの黒子となってから、彼女のしどけない格好など飽きるほど目にしている。
どうしてか胡蝶蘭は他の花姫と違って〈客〉を取らないから、自室にこもっている時は薄布の寝間着をだらしなく着崩しているからだ。
彼女は柔らかく、透けるような素材を好んで着るため、どうしたって無防備な肢体が目に入る。
その度に劣情が湧き上がり、なだめるのに苦労する。
かといって、他の花姫を抱くことは考えられなかった。
奉仕をしろと命じられ、手淫や口淫をおこなうことはある。
牡丹などは性欲が強いのか、僕の愛撫を気に入ってくれたのか知らないけれど、しょっちゅうそれをねだってくる。
だが、僕はどうしても、胡蝶蘭以外と繋がりたいとは思えなかった。
たとえ耳元で甘い嬌声を受け止め、果てる姿を目の当たりにしても――
「あった」
隠しボタンを発見し、布を破らないよう注意しながら外してゆく。
小ぶりな乳房がまろび出て、ごくりとのどが鳴った。
双丘の先端に、小粒な桜色の実を見つけ、指の腹を使いそっと擦る。
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