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第3話 フランドリウス家の人間たち ※

 中庭の稽古から戻ったミュカレに、階段の踊り場にいた複数の女性が話しかける。 「あら、御戻りかしらミュカレさん」 「―――ラストゥ様、ユシヤ様」  ミュカレはその二人に頭を下げた。 「あらあら、様付けなんてしなくていいのに。卑しい母親の出の娘だから使用人根性がしみついているのかしら?」 「まぁ、ユシヤさんってば……クスクス」 「―――ッ」  会って早々にミュカレに嫌味を言ってのけた女性ユシヤはシーヴァルトの娘であり、ラストゥ様とミュカレが呼んだ女性はユシヤの母親にしてシーヴァルトの正室だ。ユシヤは血縁上ではミュカレの異母妹だが、彼女はミュカレを姉とも思っていない。「たまたま家にいる使用人風情の娘」としか思っていない。同じように母親のラストゥもだ。ラストゥ様と呼ばせている事から、ミュカレを娘として見ていない。 「外に出て稽古だなんて……いくら我がフランドリウスが部門に優れた名家とはいえ、汚らわしい」 「まぁまぁユシヤさん。仕方のない事よ、旦那様が哀れに思って引き取った娘なのですから。本当に旦那様の血を引いているのか怪しいところでもあるし」 「………」 「それにいくら鍛錬を積んだところで、あなたはフランドリウス家の当主になれないわ。当主になるのは我が兄にして長男のアグロヴァルなのですから」 「承知しております」 「ならばよろしい。何故か旦那様はあなたを気に入っているようだけど、だからといって下手に取り入らない事ね。旦那様はお忙しいのだから」  いうだけ言ってラストゥとユシヤの二人は踊り場から二階へと階段を上っていく。見えなくなったところで頭を上げたミュカレ。見えない位置で今の様子を見てたクレフは無表情ながらに憎しみを持った声で先ほどの件を話す。 「……わざわざ言いに来るなんて、よほど暇のようですね」 「事実なのだから仕方のない事だ。下手に逆らえば風潮されてしまう」 「あの二人は何かとアグロヴァル殿を引き合いに出しますが、そのアグロヴァル殿がミュカレ様に模擬戦で負けている事を知っておいでなのでしょうか」 「さあな。……あの様子では、アグロヴァル様は告げていないだろう」  ミュカレの脳裏に浮かぶのは、以前シーヴァルトを審判に、異母弟のアグロヴァルと模擬戦をしたことだ。  アグロヴァル・フランドリウスはミュカレの異母弟であり、彼女より2つ年下の青年だ。父親の高身長と母親の金の髪を受け継ぎ、文武両道で誰にも優しい紳士だとメドラウド王国の淑女たちの憧れの的だ。だが彼の性格は外面はよいが中身はミュカレへの劣等感でいっぱいの青年で、何とかして彼女を屈服しようと幼いころから勝負を挑んできたり嫌がらせをしてきている。 「(アグロヴァル様はなぜ私のようなものに構うんだ……ユシヤ様ともラストゥ様とも違う、あの目は何だ……)」  アグロヴァルがミュカレを見る瞳は愛憎入り混じったものだった。ミュカレを呼び捨てにするが妹や母親とは違い、その対応は歪んでいるが誠実だ。だからこ模擬戦をして正面から屈服させようとしている。  男らしく大振りの剣を用いるアグロヴァルに対し、ミュカレは軽剣を持って、彼を翻弄する。一撃の重さはアグロヴァルが上で、何度も振りかぶっているが、大地を削るだけでミュカレに当たることはない。ミュカレが懐に入り込もうと近づくと、アグロヴァルは大剣を捨て、持っていたもう一本の剣で彼女に対応する。しかし時すでに遅く、ミュカレがそのまま押し倒して彼の背中を地面につけると、首筋に剣の刃を当てた。剣圧で髪が少し切れた程度だった 「(あの時は危なかったな。よほどクレフも私が負けるのが嫌だったのか相当睨んでいたようだ。クレフの顔に泥を塗らずにいて本当に良かった)」  その時のクレフはミュカレではなく、ミュカレの髪を少し切ったアグロヴァルに対して向けられていたものだった。アグロヴァルはそれに気づいているのだろう。模擬戦の後、片づけをしているクレフの元へ行き、こう述べた。 『―――お前、ミュカレをいつも見ているな』 『……それは、ミュカレ様は我が主人ですから』 『主人だから、じゃないだろう? あれは卑しい血が入っているとはいえ、父上の血を引くフランドリウス家の人間だ。お前ごときが手を出せる女ではないと身のほどを知れ』 『…………。』 『な、なんだっ、その眼はっ!』  クレフが何も言わず、ただじっと見下しているとアグロヴァルはその視線に耐えかねたのかそそくさとその場を後にした。いなくなった直後、クレフは思わず近くの木に拳を打ち付けた。 『………くそっ!』  アグロヴァル程度の男に自分の心を見透かされていたなんて―――。クレフは自分の未熟さを呪うばかりだった。  その夜クレフは自室で切られたミュカレの髪の一部を持ちながら彼女を思って慰めた。 「はぁ……はぁぁっ、ミュカレ……ミュカレ様っ…ッ! ううぅ、はぁっ、ああぁっ、あっ……ミュカレ様ッ、んぅ!」  左手でしっかりと握りしめ、少しだけついた汗を嗅ぎながら、クレフは右手で己の竿を握り締める。上下に扱くと、指が先走りで濡れていた。それでもクレフは手を止めない。彼の脳裏には今までのミュカレが映っている。幼少のミュカレ、自分に笑顔を向けるミュカレ、泥んこまみれになりながら自分に棒切れを向けて挑んでくるミュカレ、自身が女性という事を初潮という出来事で自分に隠れて泣いていたミュカレ――クレフにとってミュカレは人生そのものだ。ミュカレがいない人生なんて考えられないほどに。 「はぁ……愛して、愛しています、ミュカレ様…ミュカレ様……っ! ううくぅう、あ、あんな男よりも、俺のほうがずっと……ずっと貴方を――」  しかしクレフにとってミュカレは守るべき存在であり、誰よりも愛し、その身を捧げる女神のような存在でもあった。彼女の側にいて、守るだけでいい――当初はそれだけだったのに、男の欲望というものは際限がないもので。欲望がひたすら生まれる。 「ミュカレ様、ミュカレ様……ああぁ、ミュカレ様……!」  クレフは右手でしっかりと扱き続ける。溢れる先走りを拭うことなく、膨らむ性器に、左手で握りしめていた髪を巻き付けた。 「お、お許しください、ミュカレ様……! あぁ、俺と貴女の細胞の一部がこんなに近づいて……! ぐうぅうっ、うぐぅ! はぁ、ああぁ――――っ!」  びゅるるるるっ、とクレフは射精した。どろっとした白濁液体が両手と、ミュカレの髪にかかる。汚されたミュカレの髪の一部を見ながら、クレフは恍惚の笑みで余韻に浸っていた。 「あぁ……ミュカレ様……ミュカレ……わかります、か……俺の吐き出した精子が、貴女の細胞のなれの果てである髪にかかったんです……汚された……くくくくくっ、ふふふふふ、あはははは……っ!」  クレフは残った髪をすべて己の性器に巻き付けると両手で再び性器を扱き始めた―――。
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