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第1話 二人の王子

 メドラウド王国は優秀な国王によって統治されている大国。  そして平和な国であった。  だがここ数年内戦が続いている。理由は突然、統治している国王が突然の病にかかり、跡取りを決めずに伏せってしまったことにあった。其の為、次の王を王の息子二人のどちらかにするのがふさわしいかで王宮は二分した。文官、大臣、そして二分は軍においても同じだった。  しかし王国軍の多くは第二王子チェオル派に籍をおいた。第二王子チェオルはもともと軍人出身で彼の勇猛果敢な功績を知る軍人も多い。日頃から大臣の使い走りにされている彼らによって軍の内情をよく知るチェオルが王になってくれればありがたい事であった。  対して第一王子エイムンドは元々病弱で文官肌。彼についたのは大臣や文官といったあまり戦争で前に出ない人ばかりだった。当初の予定ならばもし内戦になり、軍がぶつかればチェオルが勝ち、そのまま皇太子の地位を確固たるものにする―――そう誰もが思っていた。 「―――何故だ! 何故フランドリウス将軍は『あちら』側についたんだ!!」 「さ、さぁ……? わかりかねます」 「それを考えるのが貴様らの仕事だろうが! 武神・フランドリウス将軍があいつについたとなれば、こちら側からも裏切りが出るぞ!」  当のチェオルは頭を抱えていた。メドラウド王国軍が誇る無敗の常勝将軍、シーヴァルト・フランドリウス将軍があろうことが自分ではなくエイムンド側についてしまったからである。シーヴァルトの知名度は国内外に通っており、軍の中でも圧倒的な人気で信奉者がいる程だ。  このままでは離反者が出てしまう。チェオルは必死に考えを巡らせた。 「シーヴァルトの頑固さは随一だ。下手な工作をしても無駄になる。どうすれば」 「チェオル様、いっそ―――彼のものを亡き者にしてしまうのはいかがでしょうか」  悪魔の囁きが彼のところに響くのだった。 「―――待て、あの男を殺すというのか」 「はい。さすれば流れは一気に傾くでしょう。幸い、シーヴァルトの長男はこちらにつくとの事。そして正室の娘を我が息子の正妻にすれば、フランドリウス家を味方にしたも同然です」  チェオルの腹心は熱弁をふるう。シーヴァルトには子供が三人いるが、うち二人は正室の子、もう一人は身分の低い娘の子。正室の子の一人は男児で勇猛果敢、剣の腕も随一。その上若かりし頃のシーヴァルトの面影を受け継いでおり美男子だと王宮で噂され、注目の的だ。 「しかし、あの男を殺せるのか……生半可な刺客では返り討ちに遭うだけだ」 「お任せを。もし殺せなくても、動けなくしてしまえはいいだけの話ですから」 「わかった。貴様に任せる」  チェオルはシーヴァルトの件を腹心に任せ、後を下がらせた。机の上にあるのは腹心が持ってきたフランドリウス家の資料。手慰みに資料を読むとそこに書いてあった恐ろしい事実にチェオルは眉をひそめ、立ち上がった。 「なんだと―――! これが、これが本当なら、フランドリウス家は味方にならないではないか! さっきの男を呼べ!」  そこには―――「フランドリウス家の当主は代々嫡子が継ぐものであり、それは生まれが誰であっても変わる事はない」と書かれていた。  そして家系図には、シーヴァルトの一番上の子は正室の息子ではなく、側室の娘と書かれていたのだから。
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